日本と大陸の民族性を語るときによく言われることがあります。日本は農耕民族 大陸は狩猟民族 もしくは遊牧民族。あながち、間違いではないように思います。この日本評は、世界の中で一番日本人が、土地に愛着を感じており、土地を大事にして、土地を守りつづけるところに、あるようです。ではなぜ、日本人にとって土地は特別なものなのでしょうか。
それは、日本がお米をお金として取り扱っていたからです。太古から江戸時代まで、役人の給料は石高であらわされていました。戦で活躍した者に与えられるボーナスも石高。つまり米を生み出す土地が与えられたのです。100万石の大名などと、言われるように、日本人にとっては米と土地が、特別な存在なのです。もちろん江戸時代にも貨幣として金の小判を使用していましたが、今でいう円という通貨にはあたらないようにも思えます。それは、世界で最初に始まった商品先物取引が大阪の米相場であったことからもわかります。つまりその土地でいくら米が収穫できるのかが、経済の基準だったのです。米粒自体は腐るので普遍性はありませんし、増やすことができますので希少性もありません。ですから、一生とっておくことができないのです。ですから米を生み出す土地を守るのです。
日本人が愛着を持ってきた土地を売買する不動産は、迷走を続けています。バブル経済による土地の高騰化。バブルの崩壊。不動産ファンドによる売買の活発化。リーマンショック。一定の量の米を育て続けていた土地が、いつしかお金で売買されるようになり、やがて価値が乱高下しました。今、不動産業界は土地をどの様な価格で取引をするかわからず、迷走しています。
そんな中だからこそ、私は土地を取り扱う時の心構えを、明確に定めました。土地の生産性を上げること、土地の価値を高めることを、行うということです。それは、ファンドに頼らず、転売を繰り返すのでもないこと。安易にアパートを建てて運用し、償却が終わった後は壊してまた建てる。そういった建設会社お得意の資産運用とは決別することでもあります。
では、具体的には、今後の不動産の有効活用はどのようにするべきなのでしょうか。実は、土地の価格とはファンドのように簡単に利回りのみで決められるものではないのです。立地 規模 需給関係に影響されます。
例えばアパートを建てて貸すことにします。駅のそばに土地を買いますか?それとも遠くに買いますか?もちろん駅のそばですよね。でも、もしその駅そばの土地が、いかがわしいお店がいっぱい建っているところだったり、怪しい企業が看板を出しているところだったらどうでしょうか?成功は難しいと思われます。その時はアパートではなくて別の建物をご提案致します。
例えば蕎麦屋を始めたいので、テナントを探すとします。そばといえば神田ですから、神田近辺で捜します。神田駅のそばがいいですか?私だったら同じ値段なら秋葉原をお勧めします。神田はオフィス街ですから繁盛しますよね。でも 土日は人がほとんど歩いていません。秋葉原はオフィス街でもあり、土日に人が集まる繁華街でもあるのです。売上はだいぶ違うと思います。
例えば土地を買ってオフィスビルを建てて貸すことにします。駅近がいいですよね。でもその駅が10年後なくなることになっていたら、どうしますか。いま、学生を当てにしているアパートが一部地域で不調です。大学が移転してしまったり、学生が減ってしまったり(少子化)。逆に大学が移転してきてアパートが不足している地域もあります。地域の事情にも左右されます。
どういう需要があるのが、その土地が何に向いているのか、将来はどうなっているのか。つまり、いろいろな選択肢があるということです。資産家の方の家族構成や年齢なども、大事なファクターの一つです。
しかし、10年先のこと20年先のことが解る人なんていません。占い師だって解りません。ですから、常に世相を感じながら、対応をとり続けなければならないのです。お土地の活用は終わりのない作業なのです。
私どもはその終わりのない作業を、お客様ご自身と、土地の持つ魅力と、時代の変化と対話をしながら、続けて参りたいと考えます。
R建設株式会社 代表取締役社長 岩井 昇